おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
電車が動き出した。



ふっ、と笑みがもれる。


なにやってるんだろう、私。



急行電車だから、三つ以上先の駅まで止まらない。



都会の明るい夜の闇に沈んだ窓の外を見ていると、しばらくして、見慣れた街の景色が見えてきた。




「…………あ」



それは、トラといっしょに過ごした街だった。



ガタゴトと走っていた電車の動きがゆるやかになり、駅に停まった。



ほとんど無意識のうちに、私はふらりと開いたドアからホームに降りた。



一年が経っていたけれど、半年も使い続けていた駅だ。



慣れ親しんだ階段をのぼり、改札を抜けて、駅を出て、

何度も買い物をしたコンビニの横を通りすぎて、何度も通った道を歩いていく。




「………なつかしい」



思わず微笑んでいた。



この道を、いつも、トラと並んで歩いていた。



スーパーで買った食料品がたくさん詰まった袋を持って。


ドラッグストアで買った生活用品を持って。


コンビニで買った缶ビールを持って。




「たのしかったな………」



一年経っても、すこしも薄れていない記憶。



あんなに楽しくて居心地のよかった日々は、私の人生で初めてだった。



きらきらと光る、まぶしい思い出の日々。




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