おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
「―――トラ?」




口をあんぐりとあけたまま、かすれた声で言うと。




「………よかった、覚えててもらえて」




くすりと笑って、私の手からコートをうばいとり、また肩にかけてくれたのは、まぎれもなく、トラだった。




「………え? え?


うそ、なんで?


なんでこんなところにいるの………?」




かろうじてそう問うと、トラがぷっと噴き出す。




「それはこっちのセリフだよ」




あのころとおなじ声で。




「ひさしぶりだな。元気にしてたか?」




あのころとおなじ表情で。




「―――うさ」




あのころとおなじように、私を呼ぶ。



その呼び方を聞いた瞬間に、言葉にならないほどの懐かしさが私の全身を支配した。




これが欲しかったんだ、と思った。



この微笑みで、この声で、こう呼ばれたかった。



これをずっと求めていた。




「泣くなよ、うさ」




笑いのまじった声で言われて、はじめて、自分がぼろぼろと泪を流しているのだと気がついた。



でも、今さら止められるわけがない。




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