おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
驚きと、嬉しさと。


一気にやってきた感情の波にもまれて、全身の力が抜けて、私はへなへなと地面にへたりこむ。



するとトラが、


「おいおい、そんなとこに座ったら寒いだろ」


と呆れたように言って、すっと右手を伸ばしてきた。



目の前に差し出されたトラの手のひら。


思わず右手を重ねる。



トラがくすりと笑って、流れるような動作で私を引きたたせた。



その動きがなんだか芝居がかっていて、私はふふっと笑いをもらす。



「なんだか、本当に王子様みたい」



トラもおなじように笑った。


それから、ディズニー映画に出てくる王子様のような仕草で、右手を胸にあて、左手を腰にあてて、右足の爪先でかつりと地面をうって。



「お姫様、お迎えにあがりました」



そう言って、私に向かってゆったりと頭をさげた。



目の前に立って、私を見下ろしてくるトラの瞳。


この一年間、何度も何度も心に描いた姿。



目の前にいるのがほんもののトラだという実感がどうしても湧かなくて、

まるで幻覚を見ているような、夢の中にいるような気がする。



黙ってトラをじっと見上げていると、トラがふっと目を細めた。




「なにぼんやりしてるんだよ?

もしかして目覚めのキスも必要か? お姫様」




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