おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
「それに、営業所でお客さんにお茶出ししてくれるときにさ、

事務方の人たちは、正直、めんどくさそうっていうか、なんでこんな仕事させられなきゃいけないんだよって思ってる感じが、ひしひしと伝わってきてたんだよな。


まあ、たしかに、事務のほうの仕事もあるわけだし、無理やりやらされて嫌々やってるんだろうなっていうのは分かるけど。

でも、それってお客さんに伝わっちゃうだろ?

だから、俺としては、すごく不服だったんだ。

お客さんにラララ不動産のこと、空気の悪い会社だって思われたら嫌だなって………。


でもさ、うさだけは違ったんだよな。

お茶出してくれるとき、いつもにこにこしてて、なんか楽しそうで。

いい子だなあって思ったし、営業の仕事のこと分かってくれてるなって嬉しかった。


うさは、お客さんのほうに、すごく嬉しそうに笑いかけて、たまに話に入ってきたりして。

『そこの土地、すごく便利で、まわりの雰囲気もいいんですよ、ぜひ見に行ってみてください』とか言ってくれて。

それで契約が成立したこともあったよ。


だから、俺は最初から、うさのこと、ものすごく気に入ってた」




雲の上の存在だったトラが、そんなふうに自分を見てくれていたなんて。



驚きすぎて、言葉も出ない。



べつに営業の仕事を助けようなんて、そんな偉そうなことは思ったこともなかった。



ただ、営業さんの仕事ぶりを近くで見られるのが嬉しくて、いろんなお客さんの話を聞けるのが面白くて。


ただの好奇心だったのに。



そんなふうに言ってもらって、申し訳ない気がした。





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