おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
「うそ? ぜんぜんそんなふうに見えなかったよ、あのとき」




あのときトラは、いつも通りの平然とした様子で、なにごともなかったように、『じゃあ、うち来る?』とさらりと言ったのだ。


そんなふうに思っていたなんて、ちっとも分からなかった。




「そりゃ、『君のことずっと好きだったんだ、だからうちに住まないか?』なんて言ったら、ドン引きだろ」




………たしかに。




「下手なこと言って引かれて、逃げられたら嫌だったからな。

俺に説教してきた女なんて、うさが初めてだったから、こんなチャンス、絶対に逃したくない、って思ったんだ」




まさかトラが、そんなにも私のことを思ってくれていたなんて。


でも、でも、やっぱり、現実感がない。



混乱していた私は、ふと、あることを思い出した。




「………ちょっと待って。

でも、あのときトラはたしか、彼女と別れたばっかりとか言ってたよね?

だから広めの部屋を借りたのに、同棲がなくなって、部屋が余ってるからルームシェアしないか、って。


それなのに私のこと好きだったなんて………」




やっぱり嘘なんじゃないか、からかわれてるんじゃないか。


そんな気持ちが消せない。




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