おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
いきなり大量の新情報が与えられて、なかなか整理がつかない。


トラの話を、一つずつ頭のなかで確認していく。



トラは彼女と同棲するつもりで広い部屋を借りていて、でも別れてしまって、家賃も高いし、ルームシェアしてくれたら助かる。


その話はすごく自然で、少しも疑う余地はなかった。


だから、すっかり信じていたのだ。




「うう………信じらんない。

じゃ、全部うそだったの?

ぜんぜん分からなかった」



「俺は営業マンだぞ?

顔色ひとつ変えずに喋るのは得意だよ。

嘘も方便、ってな」




私は呆然としてトラを見た。




「………ただの同期に、困ってるからって部屋を貸してくれるなんて、なんて親切な人なんだろう! って感激してたのに」




ぽつりとつぶやくと、トラはくすりと笑った。




「俺はこれっぽっちも親切なんかじゃないよ」



「うそ。いつも優しいじゃない」



「それは、うさにだけ。特別だよ」




トラがいたずらっぽくほほえむ。




「好きでもない女に、ルームシェアしようなんて、もちかけるわけないじゃないか。

俺はけっこう人間嫌いだからな。

他人と一緒に住むなんて、ありえないと思ってたよ。


でも、うさだけは、特別。

絶対、のがしたくなかったから。

だから、必死で誘ったんだよ」




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