おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
「俺は嫌だって言ったよ。

結婚相手まで決められたくないって、はじめて本気で怒鳴った。


でも親父が、『あっちの社長が言い出したことだから断れない、俺の面目を立ててくれ』って頼み込んできて………。

そう言われると、ごねるわけにもいかなくて。


まあ、五十鈴のことは、べつに好きではなかったけど、嫌いでもなかったし。

こういう家に生まれてしまったんだから、しょうがないか、って諦めた」




なんだか、ドラマの中みたいな話だ。


現代でもこんなことあるんだな、と他人事のように感心してしまう。



私だったら、絶対にいやだ。


仕事も結婚相手も、すべて決められてしまうなんて。


そんなの、自分の人生じゃないみたい。



でも、それを受け入れたトラは、正直にすごいと思う。





「だから俺は、いつかは五十鈴と結婚するものだと思って、恋愛とかは考えないで生きてきたんだ。

勉強と仕事のことばっかり考えて、まあ………我ながらつまらない男だけどな」




私はふるふると首を横に振った。


そんなことないよ、と伝えたくて。




「それができるのはすごいことだよ、トラ。

自分の気持ちを押し殺して生きるなんて、弱い人にはできないから」




トラは「ありがとう」と微笑んだ。




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