おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
「あの部屋を出ようって決めてからは、うさとの生活も最後だから、思いきり満喫しようって思ってた。

でも………うさの様子がおかしいのに気がついた」




え、と私は目を丸くする。


トラがにっと笑った。




「うさ、ものすごくショックうけてだろ?

俺が出ていくって言ってから。


いつもぼんやりしてたし、それに、ときどき、涙目になってた」




私は口をあんぐりと開く。




「………気づいてたの?」



「当たり前だろ? ずっと一緒にいたんだから、いつもと違うのなんて、すぐ分かるよ」



「…………」



「もしかしたら、うさも俺のこと好きになってくれたのかなって思った。

好きとまではいかなくても、俺と離れるのがさみしいって思ってくれてるのかなって。


………そしたら、とたんに惜しくなった。

うさとずっと一緒にいたくなった」



「………うん。私もあのとき、そう思ってた」




思わずそう言うと、トラが嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。




「だよな、やっぱり。

よかった、俺の思い込みじゃなくて」




照れくさくなって、私はワインのグラスをつかむ。


そして、「乾杯」とトラのグラスにかつんと当てた。




「あはは、なんの乾杯?」




トラがおかしそうに笑っているのを見ると、なんだか、泣きたいくらい幸せだった。



つい数時間前までは、まさかまたこんな時間が訪れるなんて、思ってもみなかった。




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