おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
「なんか、夢みたいだな………」




トラがしみじみとつぶやいたのを聞いて、トラも私と同じように思ってくれているのかな、と嬉しくなる。


目の奥がじんわりと熱くなった。




「またうさとこんなふうに話せるなんて。

………がんばってよかった」



「がんばるって、なにを?」



「うーん………いろんなものとの決別」




決別、と私は繰り返した。


トラがこくりとうなずいた。




「うさと離れたくなくて、うさのこと諦めたくなくて。

だから、俺は、いろんなものと決別するために、家に戻ったんだ。


ラララをやめて、実家にもどって。

まずはじめにしたのは、ABCに入社すること。

そして、ABCの幹部役員たちに、次期社長として認められること。


そして、親父の言うとおりに生きてきた自分と決別した。

それから、婚約者の五十鈴と決別した」




胸がどきっと跳ねて、それから早鐘をうつ。




「………親父に必死で説明して、それから、五十鈴と、五十鈴の親父さんと会って、直接説得した。

ここまでずっと婚約者としてやってきて、もうそろそろ式を挙げようかっていうときだったから、それを今になってやめたいなんて、許されるわけがないだろうって、みんなに言われたよ。

百パーセント俺が悪いから、もう、謝るしかなかったけどな………」




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