おふたり日和 ―同期と秘密のルームシェア―
好奇心と恐怖心で心臓をばくばく言わせている私をよそに、とうとう黒塗りの車の後部座席から人影が出てきた。

私はごくりと唾を飲み込んで、エントランスで鍵を開けるふりをしながら、そろそろと横目で見る。



………あれ?

組長じゃない。


というか、葉巻くわえた中年男とかじゃなくて―――若い女の子。


しかも、白いワンピースに淡いピンクのトレンチコートを着て、長い黒髪を風に揺らしている、いかにも清楚な女の子だ。


なーんだ。私の早とちりか。

自分のそそっかしさに苦笑しながら、私はエントランスの自動ドアを通り抜けた。


その瞬間、背後に気配を感じる。

振り向くと、ワンピースの女の子がいつの間にか私の後をついて来ていた。


………えーと。

このマンションは一応、セキュリティに気をつかっているので、部外者は立ち入れないことになっているんですが。

なので、居住者の後をついてきて中に入っちゃうってのは、あまりよろしくないんですが。


とは思うものの、さすがに面と向かってそんなことは言えない。


私はどうしたものかと頭を悩ませながらエレベーターのボタンを押した。

女の子は当たり前のように隣に立っている。



………ま、いっか。

別に害がありそうでもないし。


きっとこのマンションに知り合いがいて、待ち合わせでもしていたんだろう。

その知り合いがまだ帰っていなくて、外で立ち往生していたんだな。



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