クールな王子に捧げる不器用な恋【番外編追加】
「中央線です」

「強風で中央線も総武線も運転を見合せてたぞ」

……そんなあ。

朝比奈先輩の言葉に、私は頭を抱える。

「他に家に帰る手段はあるのか?」

「……地下鉄とバスを乗り継げばなんとか帰れると思います」

「何時に家に着くかわからないな。仕方ないな、来い」

溜め息交じりの声で呟いて、朝比奈先輩が私の手を握って歩き出す。

「あの……どこに行くんですか?」

「車で送っていく」

車なんて冗談じゃない。車内でふたりきりになるくらいなら歩いて帰った方がましだ。

「……大丈夫です。ひとりで帰れますから」

私は立ち止まって断るが、朝比奈先輩は私の手を強く引いてまた歩き出す。

「あのう……朝比奈先輩、本当にお気持ちだけで」

「状況を考えろ。このままモタモタしてると会社に泊まる羽目になるぞ」

ギロリと怖い目で睨まれ、私は朝比奈先輩に引きずられるようにエレベーターを降りると、地下の駐車場に向かった。
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