愛の胡蝶蘭<短編>
和side


「三村さん………、」


空耳、だったのかもしれないし


そう言ってほしい、自分の願望だったのかもしれない。


それでも、目の前の蘭も涙で瞳を濡らして微笑んでいたから、きっと蘭にもなにか聞こえていたのだと思う。


『私、和が好きだよ……、』


もう一度俺の目を見つめてそう言った蘭に、触れたいと思った。


でも、そんなに簡単に触れられない。


どれだけ抑えていたのか。


抑えていた分を、曝け出していいのか。


本当に、言ってもいいんだろか。


もう、伝えてもいいんだろうか。




『和………?』



情けない顔をしていたのかもしれない。


蘭の不安げな瞳が揺れた。



「……蘭、」






「蘭、」



柄にもなく、緊張していた。




「………っ、」



蘭の手が、俺のそれに重なった。




「蘭のそばに、いさせてください。」




情けないぐらい、声が震えていた。

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