【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
「……ん」


くぐもった艶やかな音は、多分タクの鼻から抜けた声。私はその音を聞いたと共に少しだけ、吐息がお互いの唇にかかるくらい少しだけ、顔を離してタクを見つめる。


タクは元々男にしてははっきりと開いた瞳を更に大きくひんむいていた。こんな顔がこんなに間近で見られる日が来るなんて、これは夢なのかな?


そうだとしたら夢で終わらせたくないよ。この柔らかさも甘い吐息も、タクから漏れた艶やかな音も。


ズザ……とタクが後退り目の前で尻餅を突く。その顔は普段は紳士で穏やかで大人なタクからは考えられないくらい真っ赤。


タクはその顔を隠すように、骨張った男らしい掌で鼻から下を片手で強く押さえた。


普段は見せない姿。そんなタクに私の胸はきゅうとすぼむ。


胸が苦しいよ、タク。息が出来なくて、涙が溢れそうで、甘過ぎて、苦しいんだよ。


もっと知りたい。タクの知らない所も、知っている所も深い所まで全部全部知り尽くしてしまいたい。
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