【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
触りたくなる程柔らかそうな畳色の短髪を乱暴に掻き毟り、唸り声を一度上げた大喜さんは、今度は冷静な表情をする。


「俺は、美姫が自分に似てるから心配な部分が大きかったんだ。だけど今日、美姫の彼氏を見て、あいつの方が前の俺に似てて辛くなったんだよ」


「蒼次郎に、前の大喜さんが?」


私は何故大喜さんがそう思ったのか分からず首を傾げると、大喜さんは困ったように笑った。そして、何だか言いにくそうに言葉を紡ぐ。


「俺さあ昔、まぁ、タクさんもだし五年前の当時一緒に働いた皆なんだけど、穂純の事、好きだったんだわ」


何となく、そんな気がしてたけど、やっぱりそうなんだ。心を救ってくれた穂純さんを全員が好きになる事だって、おかしな事じゃない。


「穂純ってあんなだからさ、自分が零さんの事を好きって自覚なくて、でも俺らは気付いてたんだ。好きだからこそ、ね。……けど、俺だって気持ちを譲れない。だから、その穂純の気持ちを見ないようにしていたよ」


大喜さんは懐かしそうに、切なそうに天井を仰ぐ。
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