【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
「でもさ、相手の気持ちに気付かないふりって辛いんだよな。……だから、お前があいつにはっきり言ってやんないとあいつ、もっと辛い。好きだから離したくないのに、もう自分の物にはならないって分かってるんだから」


大喜さんの言葉が本当に素直だから、そのぶん、ずしっと重たくのしかかる。


「分かってても、きっぱり見切り付けてもらわないと諦めつかないもんだぞ?そういう生き物なんだよ男ってもんは。馬鹿だろう?」


「……でも。タクの中には、私はいない。今でも、穂純さんがいますから。狡くても、蒼次郎を自ら手放す勇気なんて私には……」



私は搾り出すように言う。そんな分かり切った事だけど、蒼次郎に残酷な事をしているという事実よりタクの心の中を言葉にするだけで悲しくなるんだ。


こんな私に大喜さんは何を思うのかな。いっそ非難して、立ち直れないくらい罵倒してくれれば良い。そうすれば、私は独りでいる事を受け入れられるかも知れないから。


結局人任せで自分では悪役になれない。なれない所か、この優しい人に悪役を擦り付けようとさえしている。
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