【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
膝に置いた拳に、ぐっと力が入る。早く立ち直れないくらいに傷付けて、泣くくらい罵倒してよと勝手な願いを込めながら。


けれど大喜さんは、しばらく動きを止めて私を見ていた体を動かし、私の拳に大きな掌を、まるで宝物に触れるような優しい手付きで重ねたんだ。


「全く……どいつもこいつも、鈍感で世話が焼けるよな。俺には気が利く事なんか出来ないってーの」


見上げると、やっぱり苦笑気味の大喜さんの綺麗な顔。淋しさや苦しさ、切なさが滲んでいるけれど、それは包み込む、見守る大人の優しい眼差しを持っている。


「誰が、鈍感なんですか?」


「決まってんだろ?皆だよ、みーんなだよ。美姫も、タクさんも、美姫の彼氏もな」


そう言ってニカッと白い歯を見せて笑う大喜さんに心が和らぐ。やっと、爽やかないつもの笑顔を向けてくれた。


「まあ、俺から一言、言えることがあるなら、もう少し皆素直に生きればいいんじゃね?」


言いたいことだけ言った大喜さんは、うーんと背伸びをして立ち上がった。
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