【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
でもね、ごめんね。タクに……今すぐタクに会いたい。私が共にしたいのは蒼次郎じゃない。


「……ごめん。今日、バイトもあってくたくただし、親にも泊まりとは行ってなかったし真っ直ぐ帰るよ。本当にごめんね」


気がつけば、そんな言葉が口から出ていた。本当の事は言えなかった。言いたくなかった。


また、息をするように私は嘘を吐く。


「分かった……じゃあ、な」


蒼次郎のその言葉で、私は急ぎ足で歩き出す。


「……美姫!」


しかし、蒼次郎が後ろから名前を呼んだので立ち止まり振り返る。普段聞く事の無い、蒼次郎の切羽詰まった声に視界が歪む。


「……俺、美姫が思ってる程馬鹿じゃない。そんなに馬鹿じゃないから、分かってる。けど、お前がはっきりしない限り、俺はお前を手放したくない。俺は、ずっとお前がちゃんと好きだから」


切なく顔を歪ませながら本音を漏らす蒼次郎。私には真っ直ぐ過ぎて見れなくて、答える事無く背を向けて走り出した。
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