【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
大切なものがするり、またするりと僕の手から零れ落ちる感覚が直に伝わる。


美姫が僕を想っていることはとっくの昔に知っていたのに、僕は向き合わなかった。その気持ちを受け止めたら彼女を不幸にすると思って、はぐらかして来た。


だけど手放したくなくて、中途半端に彼女を僕に縛り付けて、なのに本当の意味で彼女を抱き締めたりはしなかった。一つ壁を作っていた。


この結果は全て自分のせいじゃないか。


その僕の行動が、美姫から背を向ける結果になったし、今は逆に美姫に背を向けられる結果を与えた。


遠ざかる美姫の背中。少しずつ離れるそれを見つめる度に、苦しくて息が詰まる。


僕はこのまま、大切なものを自ら手放すのか?


僕の意地で、僕の『今までもこれからも、心は穂純と共に』という決意で、一番大切な存在を失うのか……?


どうしなきゃ行けないかなんて分かっている。いつまでも立ち止まっているな。動け、動け。


皆と約束したじゃないか。もう失わない為に、掴む為にここに来たんだろう?


今この手で彼女が消えぬように抱き締めるしか無い。その純白の羽根で飛び立ってしまわぬよう、僕は鳥籠にでも何にでもなる為に、今美姫に会いに来たのだから。
< 184 / 211 >

この作品をシェア

pagetop