【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
僕の昔からのプライド?想い?そんなの、そんなの……。


「そんなの……馬鹿げてる」


思ったことが口から声となって溢れた。心の中でだけでは歯止めが利かなくなっていた。


その声が、僕を突き動かす糧となる。


走り出した僕を阻むしがらみなど、想いなど、全部薙ぎ払って、一目散に美姫の背中へ。


今にも壊れそうな、だけど強いその羽根で飛び立ってしまいそうな細い背中を後ろから、もう手放さないように、強く抱き締めた。


ずっとこうしたかったのに、何故僕は意地を張ったのでしょうね。早く僕の心からの叫びを聞いてあげていれば良かったんだ。


それをいつも聞こえないふりをして、君に良い顔をして、それでも全部我慢出来なくて君を抱いたのに、抱き締めるのにこんなに遠回りしたね。


周りに沢山迷惑をかけて、心配させて、傷付けて、だけど答えは単純な事だった。臆病な僕はようやくそれに気付いて、君を抱き締める事が出来ているよ。


「待ってください。僕の気持ちを聞かずにさよならだなんて……そんなの狡いです」


君の温もりを感じて、僕の心が言い表せない痛みと、それを越える愛しさで溢れた。


愛しさと共に流れ出そうな涙は隠す。僕は、涙を見せれる恰好良い大人にはなりきれない。
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