【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
「あの古ぼけた公園は、五年前、僕が穂純に隠して来た秘密を打ち明けた場所でした」


僕から穂純の名前が出ると、美姫の顔が少し曇る。それさえ愛しくなってしまう自分の心を抑えて、更に話を進める。


「僕にとってあの公園はたまに行きたくなる場所。五年前のあの出来事は、僕の生きる糧ですから。そこで偶然君に出会えた。初めて見た君は、儚くて、今にも崩れそうで、美しかった」


あの、涙を見せずに泣いているような君が、今でも忘れられない。あの少女が今僕の腕の中にいる事は、神様が齎した奇跡だとしか言いようが無いんだ。


「僕は初めて君を見た日から、君がずっと気になって、来る日も、来る日も君を遠くから見ていたのです。……すみません、些か気持ち悪いでしょう?」


美姫は僕の話を聞きながら、首を横に振るう。そんな事無いよ、と身体全体で表して、そうしたらまた、俯いて僕に旋毛を向けた。


君は今、何を想っていますか?美姫。


僕は、出会ってから今までの君への想いでいっぱいです。それを伝えたくて堪らない気持ちでいっぱいなんです。


だから、この細くて小さな身体で受け止めて。君が僕を思ってくれるよりもっと前に、本当は君しか見えなくなった一人の男の想いを。
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