【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
共に歩む道



季節外れだった海は、自分の輝ける季節へと足早に進んで行く。


六月。太陽や空が夏色に染まり始め、白く生まれつき紫外線に弱い私の肌はピリピリと焦がされている。


少し切り、肩にかかるかかからないかくらいの長さになった髪の毛は、本当は短くしたかったけれどタクのリクエストもあり、バッサリとは切らずに長めに残し、梳いて少しボリュームを減らしたくらい。


高校を卒業し、制服を脱ぎ捨ててスーツを着るようになった私は、驚く事に『PURE EMPEROR』で社員として働いている。


それはコネクション等ではなく、監査のバイトを続けて行く中、インテリアの事に気付いたり、ホールの稼働について意見を出したり、メニューについて思った事を言ったりと積極的に色々動いていた事を認めてもらった結果だった。


面接に来いと言われた時は驚いたけれども、高卒レベルの私で良いのかと尋ねたら、零さんは得意気に鼻を鳴らし、私に言い放った。


「学力?そんなもんが何の役に立つ。お前はたった週に一度のアルバイトで、店の細かなところに気付く能力があったじゃないか。俺は能力のある奴が欲しい」


あの言葉がどれだけ嬉しいものだったか。高卒レベルでは雇えないと私を学力の物差しで測る世の中の常識を、彼は全て覆した。
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