【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
「とりあえず、ちゃんと歌川さんに相談しなさい。それまで聞かなかった事にしとくから」


「う……ごめん、ありがとう。じゃあ、今日は蒼次郎の夢に向かって輝けの会だね」


反省してすっかり落ち込んだ私に「何だそりゃあ」なんて抜けた声で笑い出す蒼次郎。


あの頃は本当の意味で話す事が出来なかった蒼次郎とこんな風に話せるなんて、未だに信じられない。


正直今でも蒼次郎への罪悪感はあるけれど、罪悪感があるなら俺とちゃんと友達でいろと言ってくれる蒼次郎は有り難い存在。


周りに頼りながら、頼られながら、迷惑をかけ合いながら人は成長して大人になって、そして穏やかな死を迎える為に歩いて行く。


タクと出会うまで絶対に思いもしなかった考え方の元、私はゆっくりその道を歩いている。


「何か美姫、やっぱりいい女になったよなー。そんな顔、絶対しなかったもんな」


「そんな顔ってどんな顔?」


小籠包を口に運び、熱かったのかはふはふと言いながら涙目になる蒼次郎に尋ねると、蒼次郎はまた、穏やかな微笑みを私に向けた。


「誰かの為に悩む顔だよ」


ああ、私はあの頃別の世界だと思った優しい世界の住人になる事が出来たのかな。
< 200 / 211 >

この作品をシェア

pagetop