【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
「篝美姫さん。僕に隠している事はありませんか?」


「か、隠し事……?」


何を言わんとしているかも分からないし、私の質問には答えないしで混乱していると、タクはセックスをする時に似た、男臭い顔をする。


「お義母さんとお義父さんの結婚式について、僕に相談しませんでしたね」


何故それを知っているんだと尋ねる前に、あの穏やかな笑顔の男が頭に過ぎった。


蒼次郎め、聞かなかった事にしとくなんて嘘つき。いつ喋ったんだ。というか、結局タクは私の質問には答えてくれていないじゃないか。


「蒼次郎君に先に話されたのも腹立たしいのにおまけにそれを蒼次郎君から聞くなんて、僕は情けない。そんなに僕は頼りないですか 」


「そ、そんな事……すみません」


私自身が忙しくて頭から飛んでしまっていたんだ。そのうえ私なんかより忙しいタクに申し訳無くて相談出来なかっただけで、タクが頼りないなんてこと、絶対に無いし違う。


もごもごと口ごもる私にタクはふっと笑い、用意されていたコーヒーに口を付ける。


「まぁ、本題はそんな事ではありません。喜んで下さい。君の悩みは解決します。……挙げますよ、今日、お義母さん達の結婚式」


「……え?」


寝耳に水とは正にこの事だ。でも、それがタクの冗談じゃないという事は、タクの服装やその携えた笑顔だけで伝わって来た。


ただ、私は今の状況をすぐに飲み込める程頭は良く出来ていない。それだけだ。
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