【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
タクは私の肩をポンと叩き、母達よりも先に裁断に立つと、ゆっくりそちらへ進む母達を柔らかな光と共に待つ。


ヴァージンロードーをゆっくり歩く母と目が合うと、自分の母親か疑うくらい綺麗な顔で微笑んで、また前を見据えた母。


それだけで、涙の量が増えてしまう。なんとか嗚咽を漏らさぬよう口を押さえていると、祭壇の前に到着した母親。


母のドレスを握っていた義理の弟は、パタパタと走り私の隣へと来た。


「お姉ちゃん、何で泣いてるの?悲しいの?」


私の手を握りじっと見つめる彼の純粋な目。まだ小さな彼には、今味わっている私の気持ちは未体験なのだろう。


「違うよ。嬉しいの。嬉しいから泣くんだ」


意味が分からないと首をかしげる彼。これからだよ。これから先、果てなく続く向こう側に向かう途中で、それを知って行くんだよ。


いつの間にか私の手を握っている柔らかな手の温もりが、それを主張している。


生きている。強く、真っ直ぐに歩いていると。


「えー、汝妻……」


急ぎで教会と衣装を手配したからか、進行役の神父はいない為、タクが代わりに誓いの言葉を小難しい顔をして喋り出す。


互いにその拙い誓いの言葉に愛を誓い、口付けを交わす母達は、何だかそう、とても、幸せそうだった。
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