【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
そろりと振り返ると、彫りの深い氏原零の顔がニヤリ、と形を崩した。


「お前……俺の下で、あの店で働けよ」


「……は?えっと、どういう、意味ですか?」


この人は一体、何を言っているのか。今の会話の中にそんな流れになる会話があったかな。第一、店というのは、あの喫茶店の事?


「零さん、美姫じゃどんなに男装しても男には見えないと思いますが」


「アホ、んなの分かってる。俺はホールで働かせる気はねぇよ。……美姫っつったか?お前、日曜日、週一でいい。プリンスの視察をして奴らに意見をくれ」


突然のことで頭の整理がつかないけれど、これはアルバイトの勧誘ということだろうか。しかも、少し特殊な内容の。


気に入られないような言葉は言っていないけれど、逆に気に入られるような事だって言っていないししていない筈なのに。


サングラス越しの顔は瞳はふざけているわけでも無さそうだ。でも、やはり、無機質で感情が読み取れない。
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