【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
なんでだろう。タクは誰にだって優しい顔で笑うのに。それとは別種の目を穂純さんには向けているんだ。


「シュークリーム多めに買って良かった!美姫ちゃんの分もタクさんの分もあるよ!ささ!皆で食べよ!」


……この人も今、タクのこと、『タクさん』って呼んだ。私には呼ばせなかった、その呼び方で、ごく自然に。


穂純さんがそう呼ぶだけで、その名前が楽しげな音楽を奏でるように聞こえてしまう。警戒で、軽やかで、心が踊るようなピアノの旋律に似ている。


「……ええせっかくですし、お呼ばれしましょう。美姫も、ね?」


そして、そんな穂純さんの呼びかけに、優しくも切なさを感じる笑顔を向けるタク。


タクの笑顔を見て思う。私の勘違いかもしれない、けど。多分、タクは、穂純さんのことを『好き』なんだなあ、と。


私は本能で、そんな気がした。それも、勘違いかも知れないなんて思うのは上部で、本能的には確信を持っている。
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