【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
お店での監査も終わり、私は夕方二部のオープンを待たずしてタクの車で本社に戻ることになった。
「バイト以外でもいつでも遊びに来てね!」
ブロンドヘアーをさらさらと靡かせ、代表で見送りに来てくれたのは一番下っ端らしいハーフのエディ。
さっき誰が見送りするかとかでプリンス達がじゃんけんをしていたが、どうやら軍配はエディに上がったらしい。
「エディ、どさくさに紛れてサボってたら大喜に叱られますよ?君はサボり癖が少々目立つ。もう少し上手くやりなさい」
「大丈夫!ダイちゃんより、タクちゃん怒らせた方が怖いから!」
エディは美形という言葉の似合う美しい、だけど幼さ残る顔をくしゃっと崩して笑い、店内に走って行った。
あの一時間足らずの休憩でもうあんなに元気になったのか。なんてタフなのだろう。
「僕、怒ると怖いのかなぁ」
そんな事をぼんやり考えていると、タクがさっき言われた事を気にしてぼそりと呟き、後頭部を掻きむしる。
「いつも穏やかな人って、怒る時もっと静かに怒る人が多いじゃないですか。だから、タクって怒ると怖そう」
「あ、酷い、美姫まで」
タクと他愛無い会話をする事で、今日一日張り詰めていた気持ちがようやく緩み、少しだけ顔が綻んだ。