【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
「うわぁ。やっぱりこの季節の海はきついですねぇ。かなり寒い」
海に到着するや否や、タクは言葉とは裏腹に革靴と靴下を脱いで砂浜を走る。
「ほら、美姫もおいで?」
夕日に照らされ、細身の長身とミディアムの長さの黒髪天然パーマと影でまで分かるほどの高い鼻が華々しく映える。
私はスニーカーと靴下を脱いで色素の薄いジーンズを七分丈に捲った。
「うわ……冷た。季節外れ過ぎ」
「ははは、本当ですねぇ。美姫って平温低そう。足が白い」
そうして隣に立ったタクの足は、私とは違って血色の良い色をしている。
捲ったジーンズの下の脚から水温が全身に伝うような感覚が、背中をぶるりと震わせる。どうにも、私はこの寒さで動けそうに無い。
タクは楽しそうにパシャパシャと足で海水を掻き回していたが、突然憂いを帯びた瞳で立ち止まった。
タクの瞳の切ない色に心が痛む。寒さじゃなくて、タクのその瞳に時間を支配されて、タクも、そのまま動かなくて、私達の時間が止まる。