【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
家に帰ると、私が鍵を開けずともドアが開いていた。


ということは、あの人が家にいるということ。


いつもならこの時間にいる筈ないのに、なんでいるんだろう。凄く、嫌な予感がする。


そっと玄関に入ると、母親の靴と見知らぬ大きな革靴があった。


私だって馬鹿じゃない。この靴が母親の恋人の物だということくらい察しがつく。邪魔をしてはいけない。


そう思って、私はそっと自室に入ろうと歩を進めた。私の部屋はリビングの手前だから、そっと入ればバレないと思った。


けれど、閉めが甘く微かに開いたリビングから聞こえて来た話に足が止まる。


「いつになったら結婚してくれるんだ?美姫ちゃんだってもう十八歳だ。子供じゃない。理解してくれるだろう?」


「そうかもしれないけど……でも、もう子供じゃないからこそ今更他人と過ごすだなんて無理だと思うの」


盗み聞きなんて良くないのは分かっている。けれど足が動かない。聞きたくなんか無いのに。


「それならいっそ、美姫ちゃんにマンションを用意してあげたらどうだろう?美姫ちゃんは高校卒業したら就職するんだろう?丁度良いじゃないか」


やはり、聞くんじゃなかった。なんとなく、私のせいで再婚出来ないことは分かっていたけど、ここまで邪魔者扱いされていたなんて 。私には、居場所なんて無いという事を痛感せざる得ない。
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