【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
「辛い事があるなら僕に吐き出してしまいなさい。もう僕は君と顔見知りってだけの大人じゃないのですから。勿論君が僕を信用してくれているならですが……ね?」


信用していない訳が無いのに。それを分かっていてそう言っているのが分かって、私の心の鎖が少しだけ緩む。


私は今日の蒼次郎との一件と母親と恋人の話を一通りタクに話し出した。タクになら、全て知られるのも怖くない。


タクは私の話を聞きながら、聞こえるか聞こえないかくらいの声で「うん」と相槌を打つ。


その間にも背中をぽんぽんとあやすように叩くのを止めない。


どうして私は、この人にだけはこんなに素直になれるのかな。


タクだけじゃなくて、私の周りの人全てに少しだけでも素直になれたらどれだけ楽になれるだろうか。


額を少しだけ、故意にシャツに押し付けるとタクの骨張った掌が私の髪の毛を掬う。優しい、壊れ物を扱うような手付き。


この時間が、たった一秒でも長く続けば良いのにと我が儘な思いが駆け巡る。
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