【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
「そんなの簡単です。自分の周りにいる大切な人には笑顔でいて欲しい、それだけです。それっておかしな事ですか?」


あまりにもナチュラルにそんなこと言うから、私は言葉を失う。


私は周りの人間に笑顔でいて欲しいから親身になるなんて、考えた事が無い。そんな事に時間を割くなんて考えすらつかなかった。


「お家に居場所がないと言うなら僕が零さんに頼んで社員宿舎を確保しますよ?流石に僕の家に来るのなんて嫌でしょうし。僕も男ですからね。洗濯物一緒に洗わないで、なんて言われたら結構ショックです。ああ後、枕が臭いとか言われたら泣いちゃいます」


タクの言葉の一つ一つが温かくて、光の粒のように私に降り注ぐ。


その粒子はずっと私の心の鎖を開ける、いつからか錆びた合鍵を輝かせ、使い物になるように促しているようだった。


さも当たり前のように親身になってくれる。それがどれだけ凄い事かなんて考えてもいない。
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