【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
数分待つと、休憩室のドアを激しく叩く音が響く。



「こんちゃー。…あれぇ、ホントに皆揃ってるねぇ。皆暇なのぉ?」


開いたドアの先には、マーマレードのようなオレンジ色の、綿菓子みたいな髪型の垂れ目の男の人が立っていた。小柄で可愛らしい風貌は、確かにポメラニアンっぽい気もする。


「美姫、この人は零さんの御用達のサロンのヘアメイクアーティストの柳沢伍郎さんです。ゴロー、こちら新しいここの監査員の篝美姫さんです。お話したでしょう?」


「ふぅん。このコが噂の美姫ちゃんー?かぁわいいね。よろしくね」


「あ、は、はい……」


ゴローさんはふにゃあ、と力が抜けるような笑顔を私に向けてまったりとした口調でへにゃへにゃと笑う。


けれど、それとは裏腹に俊敏な動きで近くに来たかと思うと、握手のつもりか、私の手を握って上下に振り始めたのだ。


私の手を握りぶんぶん振り回す姿は同い年くらいにしか見えないゴローさん。


こんな明るい人でも、過去に何かあったって事になるんだよね。
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