【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
そういう人の気持ちに敏感で、人の為に生きれるから穂純さんは皆に好かれる人だし、私はあの人には敵わないし、あの人を心底嫌いになる事なんて出来やしない。


《とにかく、雨も酷いですし早く帰りなさい。風邪引きますよ?》


タクは私に優しくそう言うと電話を終わらせようとする。


「……切らないで、お願い、切らないで!帰りたく、ない」


こんな事を言って、自分でもタクを困らせていることは分かっているんだ。だけど止まらない。帰りたくない。一人にしないで。一人は嫌だよ。


《……分かりました。今すぐ行きますから、木の下にでもいて、少しでも濡れないようにしていて下さい。良いですね?いい子だから、お願い》


だけど、タクはそんな我が儘も受け止めてくれる。だからこそまた辛くなるんだ。


この優しさは私が特別だからじゃないって知っている。だってタクは、私がいるべきじゃない優しい世界の王子様で、私はじめじめ汚らしい世界の住人に過ぎないのだから。
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