【完】君の指先が触れる度、泣き出しそうな程心が叫ぶ
乾燥機に回すから洗濯籠に入れておいて、と言われた洋服の中の濡れたジャケットのポケットから、『なんでもお願い券』だけ取り出してリビングに戻る。


これは、これだけは傍に持っておきたい。もう濡れた上に私が握り潰してくしゃくしゃでも、これだけは失いたくない。


タクは私の為に紅茶を煎れて待っていてくれた。ダージリンの良い香りが、鼻腔を擽る。


「僕も長い事あそこで働いていたのでね、紅茶とコーヒーだけは自信ありなんです。料理は……残念ながら未だに苦手なんですが」


照れた顔で笑うタクの煎れた紅茶は、彼の人間性同様、甘く柔らかく、優しい味がした。


「美味しい、美味しいです……」


「そうですか。それは良かった。やっと君の力の抜けた顔が見れた」


タクは紅茶を飲む私に目を細めると、その大きな太陽の香りのする掌で髪の毛をくしゃっと撫でた。


その香りが、表情が、仕草が、いや、タクの全てが愛おしくて堪らない。ごぽごぽと、想いが溢れ出す。
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