俺様当主の花嫁教育
抑えようとしたやるせない思いを根っこから焚きつけるような言葉に、思わずしっかり顔を向けて、流暢に動く唇を凝視してしまった。


超絶イケメンだけど胡散臭い。
胡散臭いけど、彼の言葉は底辺まで貶められた私の劣等感を根底から抉るものだった。


そうよ。勝手に『着物が似合わない』なんて言われたくない。
これでも成人式の時の晴れ着姿は、親親戚から絶賛されたんだ。
……主に着物の柄を……だったけど。


「そ、そうよね。ありがとう」


微妙に背中を押してもらった気分で、私はそれだけ言ってニッコリ笑うと、再び彼に横顔を向けた。


今のこの心を宥めるには十分な言葉に社交辞令的なお礼を告げて、この胡散臭いイケメンとはこの場限り。
そう思ったのに……。


「でも、無理だな」

「はあ!?」


あっさりと私を否定する言葉に、今度こそ目を剥いた。


「無理って……。なんで見ず知らずのあなたにそんなこと言われなきゃなんないのよっ」


怒り心頭。
私は思わず立ち上がって、彼の方に一歩踏み出していた。
そんな私を軽く見上げて、彼はさっきよりも妖艶に、そして、何か企むような悪い顔をした。
一瞬怯む私の背後で、由香もただ息をのんでいる。


「その男、ある意味見る目ある。今のままじゃ、あんたはどう頑張ったって着物美人にはなれない」


シレッとつまらなそうに呟くと、今度は彼が私から興味を失ったようにカウンターに向き直った。
立ち上がってしまった手前、このままじゃ私も後にひけない。
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