俺様当主の花嫁教育
あの時の熱い空気を思い出して、つい心が乱される。
そんな私を見透かしたように、御影さんは妖艶に微笑んで私の耳元に唇を寄せる。
そして。


「志麻、お前が好きだ」


低い声で囁かれて、昂る鼓動が臨界点を越えた。


「……お前も認めろ。俺のことが、好きだろう?」


まるで私の心を誘導するように、そんな言葉を囁きかける。


あっさり返事をするのが悔しい。
言い返そうと真っすぐ御影さんを見つめた私は、その瞳に囚われて何も言えなくなる。


――悔しい。


西郷さんを自分の力だけで見返すことが出来なかった。
その悔しさよりも、御影さんに全て見抜かれた上に、手の平の上で踊らされる感覚が、ものすごく悔しい。


それなのに……。
私は、御影さんの余裕しゃくしゃくの言葉を否定出来ない。


あの夜は、認めることが出来なかった。
それなのに彼に抵抗出来なかった自分がわからなかった。
だけど、今ははっきりわかる。
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