俺様当主の花嫁教育
御影さんへの想いを認めはしたけれど、これはやっぱり早過ぎる。
見よう見まねで覚えたけれど、一人では出来ない着付けを御影さんに手伝ってもらいながら、私は緊張で小刻みに身体を震わせていた。


「志麻。腰紐結べ」

「……御影さん。やっぱり私……」

「なんだ。今度は俺に恥かかせるつもりか」


着付けの作業を進めながらサラッと言われて、私はただ口籠る。
そんなつもりはないけれど……私はまだまだ大和撫子には程遠いし、何よりとても荷が重い。


「御影の親族一同勢揃いなのに、お前に逃げられたら、俺はどう釈明すればいいんだ」

「それは……」


そうなんですけど。


着付けが進むにつれて及び腰になる自分を、どうにかしたい。
だけど、やっぱり緊張は隠せない。


西郷さんの結婚式から一ヵ月後……。
大安吉日の日曜日。
私の人生でも一二を争うであろうビッグイベントが始まる。


私は今日、御影さんの親族全員の前で、御影本家の嫡男の婚約者としてお披露目されるのだ。
心は決まったつもりでも、普通では味わない大袈裟な挨拶に、一週間前から緊張が途切れることはなかった。
気持ちだけが疲れ果てて、もうヘトヘトだった。


「……私はこんなの慣れてないから。それに、私まだ全然……」

「大和撫子にはなれてない、からか?」


力を込めて私の腰紐を縛り付けながら、御影さんが妖艶な瞳を私に上向ける。
その角度に、ドキッと胸が高鳴った。
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