俺様当主の花嫁教育
「まあいいじゃない。志麻だって西郷さんのことこれっぽっちも好きじゃなかったんだから」


その言い方はちょっと違う、と思いながらも、敢えて訂正する気にもなれない。


結婚ばかりを考えて、恋愛をおろそかにしていたのは、私も西郷さんも大差なくお互い様だ。
だけど割り切れないのは、結婚相手としてはハイスペックな男を逃したから……ただそれだけじゃない。


「私、西郷さんの『嫁』オーディションでも受けてた気分だわ」

「まあ、実際その通りなんじゃない?」

「でもさ、それにしたって、そのたった一人の合格者が同じ部署の後輩って酷いよね……」


そう、出会いからずっと評価を下げ続けた私と違って、三ヵ月前に突如名乗りを上げて、ダークホースのようにのし上がり、一気に逆転勝者となったのは、私もよく知る後輩のエリカちゃんだ。


「まあ、『エリカ』よりは『志麻』の方が西郷さんにとってはストライクだったんだろうね」


由香はシレッと言うけれど、それなら名前と結婚してくれればいいのに。


西郷さんは、呆然とした私に、最後に当たり前のように言ったんだ。


『君は、絶対白無垢どころか着物も似合わないと思うんだよね』


そしてエリカちゃんは確かに着物がとても似合いそうな雰囲気の子だ。
染めたこともなさそうな真っ黒の髪。
地味で目立たないけど、おっとり清楚な真面目な子。


「その上、本当に趣味がお茶とお花なんて、一体どこの時代のお姫様なのよ……」


思わず、ギリッと奥歯を噛み締めた。
< 5 / 113 >

この作品をシェア

pagetop