俺様当主の花嫁教育
エリカちゃんがすごい美人とか家柄のいいお嬢様とかなら、私にもまだ救いがあった。
だってそんなの、一般庶民の普通のOLの私じゃ、逆立ちしたって敵わない。


だけど実際のところ、私とエリカちゃんのどこに、人生の明暗を分けるような決定的な違いがあったのか。
西郷さんが本当に、着物が似合いそうな女性をお嫁さんに決めただけだと思うと、どうしたってやりきれない。


なのに……。


『そうなんです。実は、西郷さんとは三ヵ月前のお花の発表会で知り合って……』


何気なさを装ってエリカちゃんから西郷さんとのことを聞き出そうとしたら、彼女はほんのり頬を赤らめた。


きっと私が並行して西郷さんのそばにいたことなど、知りもしない。


地味に打ちひしがられる私に、穏やかにダメ押し。
本当は、チクッとでも私の存在を匂わせてやりたかった。
こんな女最低だ、とわかっていたのに、エリカちゃんを驚かせて、謝罪の言葉を引き出したかった。
なのに。


「結婚式は来年の年明けを予定してるんですけど、お世話になった先輩や上司にも来ていただきたいんです。あの……招待状お渡ししてもいいですか?」


今まで他人を疑ったり悪く思ったりしたこともないんだろうな、と思うくらいピュアな返事が戻ってきた。
もうなんと言うか……着物がどうこうよりも、心の清廉さで、私はエリカちゃんの足元にも及ばないと思った。


でも……。


「何を好き好んで、負け犬晒しに結婚式なんか行かなきゃいけないのよ……」


さすがに目に涙が浮かんできた。
< 6 / 113 >

この作品をシェア

pagetop