俺様当主の花嫁教育
私が西郷さんに抱いていた気持ちは恋ではなかったけど……。
はっきり別れを宣告されて、まだやっと一ヵ月だ。
なのに西郷さんはもうエリカちゃんにエンゲージリングを渡している。
あれからいろんなことがありすぎて、最低な別れのことが頭から抜け落ちていたけれど、自分で思う以上に傷ついていたことを自覚する。
少しだけ、じわっと涙が浮かんでしまった。
「……素敵だね。指輪」
潤んだ目を誤魔化すように顔を背けながら、私は咄嗟にそんなことを呟いていた。
わざわざそこにツッコむのは、どう考えても自虐行為だと思うのに。
「え? あ、はい。ありがとうございます!」
しかも、リング以上に輝く笑顔でお礼を言われて、ほんと、自分が惨めで堪らなくなる。
これ以上はもう笑えない。
私は急いでグロスを唇に塗って、ポーチを片付けようとした。
なのに。
「あの……。笠原さん昨日、銀座の歌舞伎座にいませんでしたか?」
エリカちゃんに遠慮がちに問われて、反射的に目を丸くしてしまった。
「あ、やっぱりそうでしたか! 実は私も、西郷さんと観劇してたんです」
「そ、そう……」
フィアンセとデートしてたことをさりげなくアピールか。
何も悪くないエリカちゃんを、心で皮肉ってしまう私が嫌だ。
エリカちゃんは私の様子には気づかずに、ほんの少し声をひそめて、内緒話でもするかのようにコソッと続けた。
「あの……。笠原さんが一緒にいたの、御影東和さんですよね……? 茶道家の」
言い当てられて、思わずギクっとした。
私の反応に、エリカちゃんは、やっぱり!と小さく声を上げた。
はっきり別れを宣告されて、まだやっと一ヵ月だ。
なのに西郷さんはもうエリカちゃんにエンゲージリングを渡している。
あれからいろんなことがありすぎて、最低な別れのことが頭から抜け落ちていたけれど、自分で思う以上に傷ついていたことを自覚する。
少しだけ、じわっと涙が浮かんでしまった。
「……素敵だね。指輪」
潤んだ目を誤魔化すように顔を背けながら、私は咄嗟にそんなことを呟いていた。
わざわざそこにツッコむのは、どう考えても自虐行為だと思うのに。
「え? あ、はい。ありがとうございます!」
しかも、リング以上に輝く笑顔でお礼を言われて、ほんと、自分が惨めで堪らなくなる。
これ以上はもう笑えない。
私は急いでグロスを唇に塗って、ポーチを片付けようとした。
なのに。
「あの……。笠原さん昨日、銀座の歌舞伎座にいませんでしたか?」
エリカちゃんに遠慮がちに問われて、反射的に目を丸くしてしまった。
「あ、やっぱりそうでしたか! 実は私も、西郷さんと観劇してたんです」
「そ、そう……」
フィアンセとデートしてたことをさりげなくアピールか。
何も悪くないエリカちゃんを、心で皮肉ってしまう私が嫌だ。
エリカちゃんは私の様子には気づかずに、ほんの少し声をひそめて、内緒話でもするかのようにコソッと続けた。
「あの……。笠原さんが一緒にいたの、御影東和さんですよね……? 茶道家の」
言い当てられて、思わずギクっとした。
私の反応に、エリカちゃんは、やっぱり!と小さく声を上げた。