俺様当主の花嫁教育
結局、浮かない気分のまま一週間を過ごし、週末の業務を終えた。
今日も御影さんが来なかったら、来週は私から連絡してみよう……そう心に決めた帰り際。


帰り支度を終えて、一人、下りのエレベーターが到着するのを待っていると、廊下から忙しない足音が聞こえてきた。
アポイントの時間に遅れそうな営業マンか?と思いながら、無意識にそっちに目を向けて、私は一瞬全身を強張らせた。


「志麻」


どこか忌々しげに歪めた表情で、私の名を呼んだのは西郷さんだった。


「あ……」


西郷さんと顔を合わせるのは、私の誕生日、呆然としたまま三ツ星レストランに放置されて以来初めてだった。


嫌でも心まで強張って、大股で近寄って来る西郷さんから、本能で後ずさる。


「お前さ。俺のことバカにしてるの?」


私が反射的に逃げようとしたのが気に食わなかったのか、西郷さんは眉間の皺を一層深めて、私の前に立ちはだかった。


「え?」


一瞬、何を言われたのかわからず、私は一度瞬きをした。


「つい一ヵ月前までは、俺にシッポ振ってたくせに。速攻乗り換えるとか、どういうことだよ」


唾が飛んで来そうなくらい勢いよく言われて、思わず顔ごと背けた時、タイミングが良くエレベーターが到着する。
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