俺様当主の花嫁教育
西郷さんでも保身に走るのか。
いや、本当に無能だからこそ、この手のトラブルを噂されるのが怖いんだ。


「……ほんと、情けない男」


余裕を装って強張りながら笑みを浮かべ、皮肉った。
無駄に高いプライドを傷つけることが出来たのか、西郷さんが気色ばむ。


「志麻、お前っ……」


怒り心頭の表情を隠しもせず、西郷さんが声を上げる。
一度止まった手が感情に任せて再び伸びて来て、私は反射的に身を竦ませた。


その時。


「ほっとけ、志麻。行くぞ」


後ろからグッと肩を掴まれて振り返る。
私の頭上で、相変わらず涼しい表情を浮かべた御影さんが、最低限の口の動きだけでそう言っていた。


「なっ、御影っ……」


散々罵った相手にいきなり割って入られて、西郷さんも無様にも怯んでいる。
御影さんは、そんな西郷さんに興味なさそうな目を向けただけで、志麻、と私を促した。


「で、でも」


御影さんの乱入で勢いを削がれた感はあるけど、あの御影さんに対する暴言だけは撤回させたい。


劣等感から来る完全な言いがかりだ。
エリカちゃんが御影さんに見惚れたことが、西郷さんのプライドを傷つけただけ。
本心ではバカにして鼻で笑っていた私が一緒にいた御影さんに、大事なフィアンセが見惚れたりしたから。
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