俺様当主の花嫁教育
「いつの世も、他人より秀でた人間は僻み妬みの的になる。俺はあんなの、生まれた瞬間から慣らされてる」


……どこまで高慢な自信家だろう。
反射的にそう思った私の頭の中を見透かすように、御影さんは横目を私に流して、口角を上げてほくそ笑んだ。


「他人からの妬みもやっかみも、俺にとっては最大の賛辞だ。だから、それは気にしなくていい。そんなことじゃなくて、志麻。お前さ……」


まっすぐ前を向いたまま、御影さんが静かにそう呟いた。
運転手さんとはかなり距離があるけれど、何を言われるのかと、私は妙な緊張感を覚える。


「あんな男に生涯捧げるつもりだったのか?」


心底から呆れ果てた声でそう言って、御影さんは静かに長い足を組み換えた。
私の心臓が、一度大きくリズムを狂わせた。


「ほんと、昔から変わらないくだらねえ男。お前、よくあんな男と結婚考えられたな……」


辛辣な声でそう言いながら、御影さんが私に視線を注ぐのが感じられた。


「……御影さんと西郷さんって……」


込み上げる涙から意識を逸らすようにして、さっきから二人の言葉の端々に覚えた疑問をポツリと漏らす。
御影さんと同じように横目で窺うと、御影さんがほんの少し眉をひそめたのがわかった。


「幼稚舎から大学まで同窓だった。昔からああだ。プライドばかりが高い、虚栄心の塊。自分でもわかってるんだろうな。期待される実力が伴わなくて自分に自信がない。金持ちばかりのクラスメイトに自分の家がどんなに裕福かってことを鼻高く聞かせてた男だ」


特に感情のこもらない声で御影さんは淡々と言った。
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