俺様当主の花嫁教育
そんな『小さな男』に、人前で聞き捨てならない暴言を好き放題に吐かせてしまった。
気にするなと言ってくれても、御影さんに申し訳なくて堪らない。
なのに、御影さんは。


「西郷が俺に絡んで来るのは、年齢一桁の頃からだ。鬱陶しい男だけど、風の前の塵みたいなもんだ。だからこそ、志麻がそんな男のどこを好きだったのか理解出来ない」


静かにはっきりした口調で、私を諫めた。


無意識に飲み込んだ言葉が、喉の奥でヒクッと音をたてた。
私は膝の上に置いた手をギュッと握りしめる。


こうも面と向かって他人から言われると、自分でもほんの一ヵ月前の自分が不思議でならない。


自分でも思ってた。
西郷さんは、御曹司という肩書に守られてるだけで、考え方も甘く特に仕事が出来るわけでもない。
とても頼れる男とは言い難い。
それでも旦那様としてハイスペックだっただけで……。


西郷さんの生涯の伴侶オーディションで、最初から不合格だったと知ってしまった今、西郷さんに魅力を感じていたかも曖昧だ。
けれど、御影さんに呆れられたからと言って、そこを素直に認めてしまっては自分が情けない。


「……御影さんには、きっと一生わからないです……」


俯いて唇を噛んで、やっとの思いで返事をすると、御影さんは一瞬無言で小さな溜め息をついた。


「御影さんにとって塵にもならない存在でも。私は半年間、西郷さんから夢をもらってたんですよ……」


自分で言っていても虚勢だと思った。
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