俺様当主の花嫁教育
そう、今どういう状況かということを丸無視して素直に認めていいのなら。
彼は、私が今までお目にかかったこともないくらい極上のイケメンだったのだ。


こんなイケメンがどうして一人で飲んでるのっ!?
一瞬甘い期待が過って、これは運命なんじゃ、とドキドキして、ついフラッと揺れる私を誰か叱って。


で、でもそうよ。西郷さんとは『恋』してなかったんだもの。
この人ならむしろお願いしてでも恋したい。
彼のことを何も知らないから、結婚したいとは思わないけれど。


「……とりあえず、見た目と雰囲気だけなら百二十点」


私の背後で、由香が更にボソッと呟く。
そうよね。うん。私もそう思う。


妙齢の女二人に視線で品定めされているとは知らず、彼はどこか物憂げに眉をひそめると、丸椅子の角度を少し変えて、私の方に身体の正面を向けた。


真っ向から放たれる男の色香と妖艶な佇まいに、魂を抜かれた気分になった。
艶やかな真っすぐの黒髪はサラリーマンらしくなく少し襟足長め。
平日の夜のオフィス街なのに、服装はしっかりしたスーツではなく、どこかしっとりとした大人のカジュアル。
でもきっと質がいいのだろう。
とってもエレガントな雰囲気が漂ってくる。


それなのに……。
私の様子を感じているのかいないのか。
彼は意地悪に口元を歪めると、長い足をさりげなく組み直しながら腕組みをしてあんたさ、と唇を動かす。
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