俺様当主の花嫁教育
名案だとでも言うように、千歳さんは機嫌よく手を叩いた。
千歳さんの断定的な言い方にドキドキしてしまうけれど、素知らぬ顔で取り繕う。


「そんなんじゃないですって。御影さんは、私みたいなど素人を短期間で教え込むことに成功したら、自分の名声にも繋がるって思ってて……」


そう。私は確かに御影さんからそう言われた。
だからこそ、彼に教えを乞うことも謝罪の一貫になると、自分に言い聞かせた。
なのに。


「バカね~、志麻ちゃん。そんなの、志麻ちゃんをその気にさせる為に決まってるじゃない」


千歳さんに、軽く笑い飛ばされた。


「えっ……」

「忘れたの? もともと東和が志麻ちゃんに稽古をつける目的は、御影の嫁にふさわしい女性にする為じゃない」

「で、でも。本当はそっちが建前で……」

「東和はそこまで暇な男じゃないわよ。それに、今更名声なんか欲しなくても、アイツは人生において手に入れられるあらゆる美徳を手中にしてるわよ」


その通りだと思ったから反論出来ずに口を噤んで、私は千歳さんの言葉の意味を深く深く考えてしまう。


本当かな……?
千歳さんが見て御影さんがいつもと違うというなら……。
もしかして、私って今、彼の『特別』な存在……とか?


戸惑いながらも顔が綻びそうになって、表情筋が弛緩しかける自分を慌てて戒めた。


いやいやいや!!
だからと言って、御影さんが本気で私を嫁にしようと考えてるわけじゃない。
ふさわしい女性にしてくれたとしても、それとこれとは話が別だ。
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