俺様当主の花嫁教育
勢い良く彼を振り返る。
すぐそこで、御影さんが私を見つめていた。
その瞳に晒されて、私は目を伏せて逃げる。


「御影さんまで……エリカちゃんに見惚れてた」


ほんの数十分前までのどうにもならない屈辱が、私の心にどす黒く染み渡っていく。


突然、御影さんが私の腕をグッと掴んで目の高さに持ち上げた。
着物の袖が肘まで降りて、私の上腕が露わになる。


いきなりの行為に、私はビクッと身体を震わせて反応してしまう。


「な、何するんですか」

「なあ……お前のその言い方も不機嫌も、俺のこと好きだって言ってるように聞こえるんだが」


右の口角を軽く上げて、御影さんが意味深な笑みを浮かべた。


「なっ……!?」

「俺が西郷の彼女を褒めたから、拗ねてるんだろ?」


予想外の御影さんの言葉に、私は軽く動揺した。


「違います! そんなわけないじゃないですか!!」


焦って否定する私を、御影さんは余裕の瞳でグッと覗き込んでくる。
妖しく光る漆黒の瞳に、鼓動がドキンと大きく鳴いた。


「違わない。西郷なんかどうでも良くて、俺の視線が欲しかったから、お前はあの子に嫉妬してるんだよ」


畳みかけられる言葉に、反論したかったのに。


「認めろ」


そんな短い命令を口にして、御影さんは私の目の前で妖艶に目を伏せた。


「……っ!!」


そして、私の頭を強引に掻き抱いて、荒々しく唇を奪った。
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