俺様当主の花嫁教育
一瞬、何をされてるのかわからなかった。
大きく見開いた私の目に、この間とは違って、しっかりと伏せられた御影さんの目元が映る。


唇を吸い上げられる感覚に、背筋にゾクッと甘い刺激が走った。


足から力が抜ける。
自分では立っていられなくなって、無意識に御影さんの胸にしがみついた。


私の行動に気付いたのか、御影さんは巧みにキスを深めて行く。
全てを絡めとられる感触に、もう何も考えられなかった。


御影さんが唇を離した途端、私はその場に崩れるようにへたり込んだ。


「っは……」


いきなり楽になった呼吸。
肺に流れ込む酸素に咽せるように、私はゴホッと咳き込んだ。


御影さんは、そんな私を見下ろしながら茶室の真ん中に歩を進めて、天井から下がる短い紐を引いた。
一瞬にして、茶室に闇が訪れる。


ハッと顔を上げると、御影さんが私の前にしゃがみ込んだ。
そして、私の顎を指先でクイッと持ち上げる。


「志麻、認めろ」


さっきと同じ命令をして、御影さんが私の瞳をまっすぐに覗き込んだ。
仄暗い茶室の中でもわかる彼の濡れた薄い唇が、嫌でも目に飛び込んで来る。
ただでさえ速い鼓動は、もう制御出来ない。


「俺を好きだと認めろ」

「……え?」


真剣な顔で、そんなことを言う御影さんがわからない。
理性の限界で何かに縋り付きながら、私は鼓動が一層速度を増すのを感じていた。
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