君の隣
帰宅した、その日の夜。

 久しぶりにゆっくりとふたりで食卓についた。

「……そういえば、名前。

 まだ正式には決めてなかったね」

慎也がぽつりと口にした。

「考えたんだ。

 今日、あの施設に行って……いろんな気持ちが巡ったから」

麻未は、湯気の立つマグカップを見つめながら、ゆっくりと話しはじめた。

「“(ゆい)”っていう名前、どうかなって思ってる」

慎也は一瞬、目を細めて、もう一度繰り返すように言った。

「……結」

「わたしたちだけじゃない、いろんな縁を結んで、ひらいていってほしいんだ」

「……いい名前だ」

「それにね、私の“過去”も、慎也との“今”も。

 ぜんぶこの子に繋がってる気がして……

 この名前にしたいって、思った」

慎也は無言でうなずき、麻未の手をそっと握った。

「じゃあ──ようこそ、結。

 パパとママのところへ」

ふたりの声に包まれて、寝ていた赤ちゃん──結が、ふわりと微笑んだ気がした。

小さな家の中に、ぬくもりが灯る。

それは、はじまりの名前。
そして、家族として生きていく、確かな第一歩だった。

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