君の隣
椅子に座る理名の前で、朱音はカルテを開いた。

 術後の病理検査の結果を改めて確認する。

「手術での摘出は、想定通り丁寧に行えたと思います。
 
悪性所見はなかった。

 ただ、筋腫の成長速度を考えると──
 再発予防として、ホルモン療法を一度、検討してもいいかもしれません」

「……ホルモン療法、ですか」

朱音は頷いた。

「GnRHアゴニストを短期で使うケースです。
 
生理を一時的に止めるような作用がある分、副作用もゼロじゃない。
 
ホットフラッシュ、骨密度の低下、気分変動……」

理名は、小さく指先を握った。

 その言葉のひとつひとつが、自分の生活に影を落とす未来を示しているようで。

「……すみません、少し考えさせてください」

「もちろん。
 これは“しなきゃいけない”治療じゃない。

 選択できる治療です。

 ただ、私はあなたに“ちゃんと選んでほしい”と思ってます」

朱音の言葉は、優しさと覚悟が交差していた。

 

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